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カリヨン

《幸也の世界へようこそ》幸也の言葉 → 《カリヨン》


カリヨン【目次】

1)カリヨンって 何?
2)カリヨンのそもそも
3)ベルギーで発明された
4)カリヨンの構造
5)鐘の造り方
6)どうやって塔の上に?
7)カリヨン聞き比べ

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【1)カリヨンって 何?】

カリヨンは 日本語では「組み鐘」と言われます。
オランダ語では「Beiaard」 フランス語では「Carillon」です。
音の高さの違う幾つもの鐘を並べて演奏する楽器です。
【23個以上の 半音階に調律され 固定して吊るされた銅の鐘を
鍵盤によって複数の音を同時に出せる楽器】
(これが今現在の「カリヨン」の国際的な定義です。)

ベルギー 特に北部のフランダース地方には
ほぼどの街にもカリヨンがある といっても良いでしょう。
ベルギーを旅行すると 訪れる先々の街で
メロディーを奏でる鐘の音が聞こえてきます。
それがカリヨンです。
しかし その音はどこから聞こえてくるのでしょうか?

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【2)カリヨンのそもそも】

ベルギーの(特に北部のフランダース地方の)どの街にも
街の中心に塔があります。鐘楼といわれるものです。
Gent_Belfort_oost_140x240.jpg(51806 byte) Brugge_Belfort_160x240.jpg(48669 byte) Antwerpen_Kathedraal_toren_160x240.jpg(65991 byte)
 〔ゲントの鐘楼〕  〔ブルージュの鐘楼〕  〔アントワープの聖母大聖堂の塔〕

その名のとおり「鐘を吊り下げている塔」です。
これらの鐘楼は フランダース地方の都市がものすごく繁栄して
「自由都市」という自治の仕組みを取るようになった
その象徴として12世紀以降都市の中心に建てられたもので
「フランダース地方と北フランス鐘楼群」として世界遺産に登録されています。
それらの塔は「侵略者が来ないか」「火事が起きていないか」
「嵐が来ないか」を見張るためのものでした。
そこに「警鐘」(=警告のための鐘)として 鐘が吊り下げられました。
そして 鐘は時計と連動して時を知らせたり
城門の開閉や 労働時間の開始/終了を知らせるためにも
あるいは 街全体のお祝い事のときに鳴らされたりもしました。
そして 毎時時報として鳴らす鐘を 手で叩くのでは無く
時計と連動させた機械仕掛けにしました。

  塔の鐘は 四つが基本になりました。
見張る目的が三つ そして時報ですので
時報/火事/侵略者/嵐の4種類を音で分けたのです。

その音は ソ/ド/レ/ミの音でした。
そうすると!
「その四つの鐘でメロディーを奏でられるんじゃない?!」と思いついたのです。
というのは 時計と連動した機械仕掛けの時報が鳴らされはしましたが
いきなり時報が鳴ったのでは 最初の音は聞き逃してしまうかもしれません。
ですから 時報の前触れとしての「前奏曲」を付けたらどうかな
ということになったのです。
かつ 大小の鐘を並べて叩き メロディーを奏でる というのは
すでに十世紀頃から 修道院や学校で行われていました。
(初めは 手持ちの鐘でした。)
ですから 塔の鐘でもメロディーを奏でよう ということになったのです。
その「四つの鐘のメロディー」は 皆さん誰でもが知っているはずです。
皆さん 小学生の時のことを覚えていますか?
学校で こういうのが毎時間鳴らされていましたね?
【ここをクリックして音を聞いてください】
そう 懐かしいチャイムの音です。
これは ロンドンの「ウエストミンスターの鐘」のメロディーですが
音の高さが四つなのが分かりますか?

なぜ 「カリヨン」という名前なのか
それはここから来ているのです。
カリヨンの語源は「クワドローン」=quattuor+dolone=四つの楽器
という言い方から来たものと言われています。
仮に鐘を四つにしたから「仮り四」ではありません!
鐘が四つで「かねよん」でもありません!

そして ベルギー人は・・・!
「鐘をもっと増やしたら?」と思いついたのです。

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【3)ベルギーで発明された!】

まだベルギーという国が無かった中世の頃 このあたりはブルゴーニュ公国でした。
ヨーロッパ中で最も経済的に繁栄しただけではなく
15世紀から16世紀にかけて芸術においてもヨーロッパの中心でした。
タペストリー/油絵絵画/木彫り彫刻/手書き本/金属細工
そして ベルギーは多声音楽(=和音がある西洋音楽)発祥の地でもあります。
音楽的にも西洋音楽の中心地で ヨーロッパでは
「音楽家=ブルゴーニュ公国出身」といわれていたほどでした。

初めは鐘を手で(叩いたらば痛いので 手に持ったハンマーで)叩いていたのですが
鐘の数が多くなると 一人では手が届きません。
handcloche_543x240.jpg(61316 byte)
ですので 機械仕掛けを作った というわけです。
時計と連動させた棒状のドラムが 回転しながらレバーを持ち上げ
金属線でハンマーに接続し ハンマーを持ち上げて鐘を叩く仕組みが
14世紀前半にはすでに開発されていました。
  鍵盤を使って演奏するカリヨンが初めて文献に登場したのは
1510年のことだそうです。

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【4)カリヨンの構造】

カリヨンの演奏装置は 手動と自動との二種類があります。
すなわち 人間が演奏するのと 機械が演奏するのと です。
カリヨンの演奏装置はとても複雑です。
手動演奏の場合は このような装置です。
Mechelen_Kathedraal_beiaard_klavier_240x240.jpg(73763 byte) Antwerpen_Vleeshuis_beiaard_klavier_160x240.jpg(68239 byte)
鍵盤を使います。
基本的にげんこつで叩く動作と 足でペダルを踏む動作です。
なので 一度に出せる音は基本的には三つです。
(ただし 片手で二つずづ音を出すやり方もあるようです。)
カリヨンコンサートというのは手動での生演奏になります。
やはり 自動と違い情緒が出ます。
カリヨン用に作曲された曲は少ないので ほとんどの場合は
カリヨン用に編曲して演奏されます。

こちらが 自動演奏装置です。オルゴールと同じ仕組みです。
Mechelen_Kathedraal_beiaard_tromnel_400x240.jpg(119420 byte) Mechelen_Kathedraal_beiaard_mekaniek_420x240.jpg(134454 byte) Brugge_Belfort_Beiaard_trommel_400x240.jpg(105756 byte)

巨大な円柱(ドラム)に穴が開いていて そこにピンを挿し
円柱が回転すると ピンがワイヤーを引っ張ってハンマーが鐘を叩く
という仕組みです。
あの円柱には 穴が数千から万を越えるほどもあり
ピンを挿す場所は変えられますから 定期的に曲を変えることができます。

では このような複雑な演奏装置が
なぜどうやってフランダース地方で発明されたのでしょうか?
それは フランダース伯爵領が
ヨーロッパの毛織物産業の中心地だったからです。
Antwerpen_Vleeshuis_beiaard_klavier_240x240.jpg(82756 byte) Mendel_Pedal_webstoel_160x240.jpg(63240 byte)
左がカリヨンの演奏装置で 右が機織機です。
ほら そっくりですね。
そう カリヨンの演奏装置は 機織機の原理を応用したものなのです。

そしてなんと!
世界最古の自動演奏装置であり しかも
発明されてから五百年後の今日まで
同じ仕組み/同じ構造/同じ仕掛けなのです。

カリヨンには 幾つ鐘が付いているのでしょうか?
小さいカリヨンでしたら鐘が15個くらいのものからあります。
(ただし「カリヨン」と称しても良いのは 23個以上と決められています。)
大きいカリヨンでしたら だいたい鐘が36~49個です。
半音階なので最大4オクターヴになります。
鐘の大きさは 小さい鐘は直径30cmで15kgくらい。
大きい鐘は直径2mで重さは6トンくらいになります。
例外的にもっと大きいものもあります。
ですので 一組のカリヨンは 鐘と演奏装置とを合わせると
20トンとか30トンとかにもなるのです。
そうです カリヨンは「地上最大の楽器」なのです!

ところで 日本にも鐘はありますが 日本の鐘は木の棒で撞きます。
京都知恩院の鐘

しかし カリヨンは金属(=銅)のハンマーで叩きます。
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 カリヨンのハンマー ルーヴェンカトリック大学図書館のカリヨンのハンマー

なぜそのように違っているのでしょうか? 
響き(=音色)が違うからです。
木で叩くと 「ゴォ~ォ~ォ~ン」という音になります。
銅で叩くと 「カァーァーァーン」です。
カリヨンは警鐘から始まりました。
警鐘は 人の注意を引き付けるため つまり人をビックリさせるためです。
「ア」というのはビックリの音なのです。
それに対して日本の鐘の「ゴーン」は「オ」の音で
「オ」は調和の音なのです。

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【5)鐘の造り方】

次にカリヨンの鐘の造り方を見てみましょう。
カリヨンはみな青銅でできています。
銅を八割 錫をニ割で混ぜたものです。
他の金属を混ぜると違う音色になってしまうそうです。
中世以来ベルギーの金属加工はとても高水準でした!
(これもまた ベルギーでカリヨンが盛んになった理由のひとつです。)

全ての鐘は 「その」鐘楼のためだけに作られる特注品でした。

【工程】

1)内側の型(核=コア)を石で作る
2)鐘の模型を 粘土と蝋で作る
3)外側の型を作る
4)鋳溶かした青銅を二つの型の間に流し込む
5)型を外す


(以下は ルーヴェンにあったベルギーで最後の鐘の鋳造所セルゲイ家の工房の再現です。)

先ずは 内側の型(核/芯)を石で作ります。
Klokkengieterij_proces_1_240x240.jpg(86937 byte) Klokkengieterij_proces_2_240x240.jpg(89432 byte)

その外側に 本物の鐘と同じ形の模型を粘土と蝋を混ぜたもので作ります。
Klokkengieterij_proces_4_240x240.jpg(88683 byte)

そして このような道具を使いながら形を整えます。
Klokkengieterij_proces_3_240x240.jpg(76141 byte)

そして さらにこの外側に粘土と麻を混ぜたものを塗って 外側の型を作ります。
Klokkengieterij_proces_5_240x240.jpg(85230 byte)

そうしてできた二つの型の間に このような炉で熱く熱して溶けた青銅を流し込みます。
Klokkengieterij_proces_6_240x240.jpg(80475 byte)

型は 床の中(金属の板が立っている3箇所の下)に埋め込まれています。
Klokkengieterij_proces_7_320x240.jpg(100479 byte)

床の溝を青銅が流れて型に流れ入るという仕組みです。
そうして 完全に冷めたら掘り出して
型を外して鐘を取り出します。
Klokkengieterij_proces_8_240x240.jpg(87632 byte)

これで鐘はできあがりました。

しかし!
しかし なのです。
鐘は出来上がってみないと どういう音が出るのか分からないのです。
音の高さも分かりません。音色も分かりません。響き方も分かりません。
つまり 鐘を造るのは「行き当たりばったり」だったのです。
ですから 昔造られた鐘は
音の高さがきちんと調律されていなかったり
音が濁っていたりしました。

その「行き当たりばったり」を何とかしたのが
フランソワとピーテルのヘモニー兄弟でした。
(ロレーヌ地方の出身とされていますので フランス語ではエモニです。)
ヘモニー兄弟と盲目のオルガニスト
 〔(左)盲目のオルガン奏者ファン・エイクと ヘモニー兄弟〕

ヘモニー兄弟は 盲人のカリヨン奏者の鋭敏な耳を借りて
澄んだ音色の きちんとした調律の鐘を造り
「カリヨンのストラディヴァリ」と称されました。

彼等の作品はベルギーとオランダとにあります。
ヘモニー兄弟の鐘

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【6)どうやって塔の上に?】

さて 出来上がった鐘を どうやって塔に上げるのでしょうか?
たとえば メッヒェレンの聖ロンバウツ大聖堂の塔は 高さが97mあります。
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 塔の外観

大きいものになると 8トンを超えるような鐘を
どのようにあの高い塔に上げるのでしょうか?
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 大きい鐘

塔の階段はこんなに狭いのです。
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 塔の螺旋階段

塔を教会の内側から見上げると
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 塔の穴
あそこに 穴が開いているのが見えます。
それを 上から見ると・・・・このようになっています。
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 塔の昇降箱
今は空の箱が下がっていますが ここから上に引き上げるのです。
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 塔の巻き上げ機
これが巻き上げ機です。あの中を人が歩いて動かします。

これは塔の断面図です。
メッヒェレン聖ロンバウツ大聖堂 塔の断面図

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【7)カリヨン聞き比べ】

さあ これで塔に鐘を設置できましたので ベルギー各地のカリヨンを聞き比べてみましょう。
先程もお話したように カリヨンはそれぞれの鐘楼のために造られていますから
カリヨンによってかなりの音の違いがあるのです。
かつ それぞれの鐘楼のカリヨンも 一度に纏めて作られたものは少なく
いろいろな時代のが混ざっている方が多いのですが
そうすると 音の響きはより複雑(あるいは豊か)(あるいは不統一)になります。

(なぜ 違う時代のものが混ざっているのか?
①どの街も エモニー兄弟の鐘を持ちたかったから新たに購入した。
②それ以前の鐘は 質が悪かったから換えられた。
③カトリック教会は お金欲しさに鐘を売った。
④18世紀末から19世紀初めにかけてのフランス統治時代に
ベルギーの鐘の七割が略奪され それで三億枚のフランス硬貨が作られた。
⑤二十世紀の二度の世界大戦中に ドイツによって略奪された。 などが理由です。)

では 音の響きの違いを聞いてみて下さい。

【カリヨン聞き比べ】

1)アントワープの聖母大聖堂
2)ゲントの鐘楼
3)ブルージュの鐘楼
4)ルーヴェンのルーヴェンカトリック大学図書館
5)キール(アントワープ)の聖カタリーナ教会



☆アントワープの聖母大聖堂
【ここをクリックして音を聞いてください】

1459年(1個)/
1650年代(36個=ヘモニー兄弟作)/
1990年(12個)製 計49個の鐘
自動演奏装置1730年製
総重量27648kg 最大の鐘4963kg

市の記録によると 1482年に「人間が手で時計の鐘を鳴らした」ことが記されており
これがカリヨンに関する世界最古の文献となっています。
また1535年には「時計と連動した12個の鐘の自動演奏装置」が記されています。
アントワープの聖母大聖堂は 北側の塔だけは(鐘楼として市の安全に関わっていたため)
教会のものではなく市の所有です。
そのために 塔に教会と市とがそれぞれにカリヨンを(競って)設置しました。
ですので 教会と市とがヘモニー兄弟の鐘を32個ずつ所有し
塔には合計で80個もの鐘がありました。
しかし 時代と共に教会所有の鐘は売りに出されたり貸し出されたりして散逸してしまいました。
今日残されて演奏されているのは 市のカリヨンです。
1459年製のが一つ 1650年代のヘモニー兄弟製のが36個
それに1990年に12個新たに加えられたもので構成されています。
自動演奏装置は1730年製のものが使われ続けています。
ただし ゼンマイ仕掛けの時計と連動していたものが
1990年にコンピューター制御へと変えられました。


☆ゲントの鐘楼
【ここをクリックして音を聞いてください】

1659年~1993年製 計54個
自動演奏装置 1659年製
総重量30129kg 最大の鐘6020kg。

ゲントの鐘の歴史は 1047年の「告知の鐘」にまで遡ります。
1314年には「嵐の鐘」が追加されました。
現在の鐘楼に自動演奏装置が最初に設置されたのは
1376年(=鐘楼が建てられた時)です。
初めは 1オクターブの10個の鐘だけだったようです。
1552年には 18個の鐘を持つ鍵盤演奏装置が造られました。
1659年にはピーテル・ヘモニーに32個の鐘が注文され
「この国にこれ以上のものはないほどの完成度」となりました。
ピーテル・ヘモニーはゲントに引っ越してきて 四年間で四百もの鐘を作っています。
その後時代と共に鐘は増やされ
1860年には鐘が52個の世界最大のカリヨンとなりました。
1981年に鐘楼の改修工事に合わせてカリヨンも再構築され 26個の鐘が追加されました。
ですので 今日聞かれる54個の鐘のカリヨンは
四人(ヵ所)の鋳造所のものを合わせたものです。
ゲントの鐘楼は 建物の開口部が少ないために
鐘の音が外に充分に響かず こもった音に聞こえます。
1913年に開かれた万国博覧会の時に急いで改築した結果で
その当時から欠点が指摘されていました。


☆ブルージュの鐘楼
【ここをクリックして音を聞いてください】

1742年(26個)/
2010年(21個)製 計47個の鐘
自動演奏装置 1748年製
総重量27535kg 最大の鐘5382kg

ブルージュのカリヨンがある鐘楼は 1300年に完成した建物を増改築して
1486年に(ほぼ)今日の形になりました。
最も古い鐘については 1292年の市の記録に「結婚の鐘」の記述が見られます。
その後 市議会の開始を知らせる鐘
労働の開始と終了を知らせる鐘
お祝い事の時に鳴らされる「勝利の鐘」
などが付けられていきました。
1396年には 時計と連動した鐘が付けられていたようです。
カリヨンが演奏された最初の記録は1528年です。
11個の鐘が手動で鳴らされました。
その後鐘は徐々に追加され 1681年には39個の鐘を揃えていました。
しかし1741年の火事で全て焼失してしまいました。
再び作られた鐘の内の26個(1740年代)と 2010年の修復で造られた21個とで
今日のブルージュのカリヨンは構成されています。
自動演奏装置も その火事で焼失しましたので 鐘と同時に造られました(1748年)。
円柱(ドラム)は直径206cm 9000kgで
30500の穴が開き 122本のハンマーと連結している
ベルギーで最大のものとなっています。


☆ルーヴェンのルーヴェンカトリック大学図書館
【ここをクリックして音を聞いてください】

1928年(32個)/1983年(31個)製
計63個の鐘(設置当時ヨーロッパ最大)
自動演奏装置 1928年製
総重量35349kg 最大の鐘7096kg。

ルーヴェンは ベルギーで最もカリヨンが多い街で 全部で5組あります。
その中でも最も重要なのがルーヴェンカトリック大学図書館のカリヨンです。
ルーヴェンカトリック大学は 1425年に創立された 現存する世界最古のカトリック大学です。
ですので その図書館は中世以来の膨大な蔵書を持つヨーロッパでも特に重要な図書館の一つでした。
しかし 第一次世界大戦で ドイツ軍の爆撃を受け全壊しました。
その後建てられた新しい図書館に付けられた塔に
総重量32t(当時ヨーロッパ最大)48個の鐘のカリヨンが設置されました(1928年)。
ベルギー国内で唯一のイギリス製の鐘です。
これは ヨーロッパの大学で初めてのカリヨンであり
これを真似てアメリカで続々とカリヨンが設置されるようになりました。
(アメリカは世界最多のカリヨンを持つ国です。)
その後1983年に修復された際に 交換/追加され
63個の鐘を持つ設置当時ヨーロッパ最大のカリヨンとなりました。


☆メッヒェレンの聖ロンバウツ大聖堂
【ここをクリックして音を聞いてください】

1981年製 計49個の鐘
自動演奏装置 1982年
総重量39244kg(ベルギーで最大) 最大の鐘8180kg(ベルギーで最大)

この聖ロンバウツ大聖堂の塔には ベルギー国内で唯一(以前は世界で唯一)
二組のカリヨンがあります。
今日演奏されているのは 新しいカリヨンで 1981年に造られました。

記録に残っている最古の鐘は 1311年の「嵐の鐘」
すなわち嵐が来ることを知らせる鐘です。
その後 追加されたり 修復されたり 取り替えられたりしましたが
1680年にメッヒェレン市と
大聖堂の守護聖人である聖ロンバウツの千年祭を迎えるに当たって
「エモニー兄弟の鐘を持っていないことは大変な不名誉である」ということで
33個の鐘を購入しました。
1705年には 当時世界最大の文字盤(11.72m)を持つ時計が塔に付けられました。
しかし 古いカリヨンは 様々な時代に
異なった製作者によって作られたものの寄せ集めでしたので
鐘の質がばらばらで 鐘によっては響きにかなりの問題がありました。
また 磨耗や劣化も激しく 修復が困難なために 新しいカリヨンを入れることにし
古いカリヨンは「歴史的(=博物館的)価値」があるとして残されました。

メッヒェレンは「カリヨンの街」とも言われています。
19世紀半ばから メッヘレン出身のアドルフ・デネイン(1823~1894)によって
カリヨン芸術の変革と復活が始められました。
カリヨンの演奏を革新したのです。
そして 彼の息子であるジェフ・デネイン(1862-1941)は 父の仕事を引き継ぎ
カリヨンの演奏方法に関して 更なる革新をもたらしました。
1922年にジェフ・デネインは世界で初めてのカリヨン学校として
メッヘレン・カリヨン学校を設立し 初代校長に就任しました。
また メッヒェレンでは 世界で初めてのカリヨンコンクール
「ファビオラ王妃賞」も開催されるようになり
1987年以来 約五年ことに開かれています。

☆キールの聖カタリーナ教会(アントワープ)
【ここをクリックして音を聞いてください】

1993年製 47個の鐘
自動演奏装置 1913年製
総重量1820kg 最大の鐘250kg

アントワープ郊外のキールにある聖カタリーナ教会は 1860年代に建てられました。
(ネロとパトラッシュは 完成したばかりのこの教会の前を毎日通っていました。)
見るからに「村の地区教会」なのですが 20世紀初めに
とても音楽好きな司祭さんが オルガンとカリヨンとを設置しました。
(今現在アントワープ市内 = 昔の城壁の外の地域も含めた大アントワープ市には
カリヨンは三組しかありません。その内の一つです。)
1964年まで演奏されていましたが その後カリヨン奏者の後継者がおらず
20年以上放置されました。
教会の125周年記念を機に募金によって作り直されましたが
塔自体も小さいために ここのカリヨンは
小さい鐘を使った1オクターブ高い音が出るものとなっています。

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「カリヨン文化の保護」(保存/継承/交流/啓発)が
「優れた保護措置の登録」として
2014年に 世界無形文化遺産に登録されました。
ベルギー国内には 今現在(塔に付けられている固定の)カリヨンが
76都市に94組あります。
ベルギーのどこかの街で鐘の音が聞こえてきたらば
是非耳を傾けてみて下さい。

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