楽器の演奏法
10)音程とヴィブラート
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音程
楽器によって 音程を自由に調節できるものと できないものとがあります。弦楽器や声楽では音程を自由に調節できますので それを有効に利用することができます。
音程のとり方には大きく分けて三種類あります。@平均律 A和声的 B旋律的 です。鍵盤楽器に使われている平均律で演奏すると どの調であってもそれなりに正しい響きとなります。しかし 和音をもっときれいに響かせたいのであれば 和声的な音程のとり方となります。ところが 和声的な音程のとり方で旋律を弾くとおかしな響きとなります。
平均律と和性的な音程のとり方とは 絶対的な(数値で出したり 機械で計測できる)音の関係性があります。しかし 旋律的な音程のとり方は 多分に感覚的なものです。(つまり どういう音のとり方を「美しい」と感じるのかは人それぞれです。)
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ヴィブラート
ヴィブラートとは 音を恣意的に揺らすことによって 音を生き活きとさせることです。
これには二種類の揺らし方があります。
@音の高さを変える
A音の強さを変える
弦楽器のヴィブラートは基本的に音の高さと強さとを変えています。開放弦の時には音の強さの変化だけを使います。管楽器の場合には基本的には息の強さで音の強さを変えます。
ヴィブラートとは結局は音を波にするということですが 波には「高低」(=波高)と「長さ」(=波長)との二つの要素があります。
「波高」の加減とは 音の高さを変化させるヴィブラートの場合には 音の高さの違いになります。弦楽器では 弦を押さえている指を動かす揺れの幅です。このような弦楽器の音高の変化を使うヴィブラートの場合には 必ず基本となる音から低い方へと揺らします。音の強さを変化させるヴィブラートの場合には 「波高」は音の強さの変化になります。管楽器では息の強弱の幅 あるいは楽器のどこかに触れている手を揺らす幅です。弦楽器の場合には 楽器のどこかに触れている手あるいは指の揺らす幅です。
長い音にかける場合 音のどこにかけるか 幾つかのやり方があります。
@音の初めから終わりまで同じようにかける WWWWWWWW
A音の初めにはかけずに 後からかけ始める ----wWWW
B音の初めからけるが 終わりの方にはかけない WWWww---
C音の初めと終わりにはかけない --WWWW--
Dだんだんと波高を高くしていく WWWWWWWW
Eだんだんと波高を低くしていく WWWWWWWW
これらを組み合わせて その音に適した波高でヴィブラートをかけます。楽曲に適したかけ方をしないと 下品になりますので気をつけましょう。
「波長」の変化とはすなわちヴィブラートの速さです。これは 拍に合わせます。ほとんどの音楽では一拍に四つです。ゆっくりな曲ですと一拍に六つです。この「数を拍に合わせる」ということをしないと 音楽とは関係の無い「滅茶苦茶な揺らし」にしかなりません。特に合奏では音が濁ってしまいます。
波動には「縦波」と「横波」とがあります。縦と横どちらに揺れるかの違いです。横波=光/電波/水面の波。縦波=音波/水中の波/氣。音波も念波も縦波ですので 音には「氣」「想い」「気持ち」「情感」を乗せやすいのです。
多くの演奏家が ヴィブラートを単に音を揺らすだけと認識していて 掛け方をきちんと意図できていません。あるいは ほとんど痙攣状の または縮緬(ちりめん)ヴィブラートをかける人がいますが(と言うよりも それしかかけられない人がいますが)全く非音楽的です。個々の音を「どう響かせたいのか」=「どう鳴らしたいのか」をきちんと意図しましょう。すなわち どういうヴィブラートを掛ければ最も素晴しい響きになるのか です。
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