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三十六簧活斗鍵打笙

(さんじゅうろくこう かっと けんだ しょう)

または 三十六簧加鍵方斗拡音笙

《幸也の世界へようこそ》《幸也の音楽》》 → 《三十六簧活斗鍵打笙》


三十六簧活斗鍵打笙(三十六簧加鍵方斗拡音笙)とは.....


三十六簧活斗鍵打笙は数多くある中国の笙の内の一つです。

笙は今から二千年以上前から中国で使われている楽器で
そもそもは南アジアが発祥ではないかと言われています。
「笙」は日本語では「しょう」 中国語では同じ字を書いて「sheng」と読んでいますが
その字~竹冠+生まれる~が現しているように 竹を使った楽器で
ですので竹文化の南アジアが発祥なのも納得して頂けるかと思います。

中国はかなり広い国で かつ沢山の民族がおりますので
一口に「笙」と言っても実際には幾つものタイプがあります。
中国の南の方で使われているのは「糸竹笙」または「蘇笙」
北の方で使われているものは「円笙」
東の地域では「方笙」
そしてごく一部の地域で「蘆笙」と呼ばれるものが使われています。
これらは伝統的なものですが それに対して近年新たに作られるようになったものとして
「排笙」「加鍵笙」などがあります。
これらは主に形・素材・機能の違いを表したものですが 更に管の数の違いもあり
14本・17本・21本の管を持つものが最も広く普及していました。

日本には八世紀頃に伝来し 主に雅楽の中で和音楽器として使われてきました。
日本に入ってきて使われたものは 中国の笙の中でも「17簧円笙」と呼ばれるものです。
この円笙は 鳳凰の姿をかたどったものと言われています。
(下の写真では右の二つの大型の楽器には 長い吹き口が付いていますが
昔は 左側の小さいサイズの楽器にもこのような長い吹き口が付けられていました。)

雅楽は 宮中の音楽であり ですので 日本の笙は優美な音色を持っています。
その為に 日本では笙の音は「天の響き」と呼ばれてきました。
それに対して中国では
同じく和音楽器としてではあっても 民俗音楽に使われてきました。
その為に 中国の笙は世俗的な音色を特徴としています。

中国の笙は 竹の管が金属の「椀」(中国語で「斗」)に立てられ
それぞれの管の端に 銅製のリード(中国語で「簧」)が蝋で付けられているのがその基本的な構造です。
リード=簧は 管の最下部の椀に入って隠れている部分に付けられていますので 外からは見えません。
竹は「紫竹」という種類が 最も鳴りが良いということで使われます。
これは日本には無いものなので 日本の笙では紫竹は使われていません。
そして 金属の椀の形が円形か角型かで「円笙」「方笙」または「円斗」「方斗」という言い方の違いになります。

中国の音楽は 五音音階(ド・レ・ミ・ソ・ラの五音で構成された音階)を基本にしています。
そして 西洋音楽風に言うと ニ長調が基本です。
ですので 笙はレを基音とした五音音階(レ・ミ・ファ♯・ラ・シ)を演奏しやすく作られています。
それは即ち 半音が含まれない ということでもあります。

中国では文化大革命時代に
伝統音楽の否定・新たな創作音楽の演奏と
音量の増大・音域の拡張などの目的で
金属製の管や 指で操作する鍵を付け加えた改良型の笙が次々と発明されました。
今では 17本の管を持ったものが基本で そのほかに21本と36本のもの
以上三種類が標準となっています。
ただし 17本 あるいは21本の管の楽器では 全ての音列を半音にすると音域が狭くなってしまうので
半音・全音を混ぜた音列の構成になっています。
ですので 17簧笙と21簧笙は 演奏する調によって
C管・D管・E管・F管・G管の楽器を使い分けることになります。

また 管の数を増やし 音域が広げられましたので 楽器自体が大きくなりました。
そもそもの笙は 管に開いている穴を指で押さえますが(押さえた管だけ音が出ます)
大きくなった楽器を演奏しやすいように キー=「鍵」が付け加えられました。
更に 音量を大きくするために 金属製の共鳴管が付け加えられました。

ですので「三十六簧活斗鍵打笙」という言い方は
三十六簧=リードが36枚ある(=管が36本ある)
活斗=椀(斗)の蓋が取り外せる
鍵打=キー(鍵)を指で押さえる
笙 という意味になります。
ただし その他に「三十六簧加鍵方斗拡音笙」という言い方もあります。
加鍵=鍵を付け加えた
方斗=角ばった形の斗(=椀)
拡音=共鳴管を付けて音を大きくした
という意味となります。
すなわち 中国でも この楽器の名称は統一されていないようです。

幸也が使っている楽器は 管を36本に増やし 3オクターブにわたって全て半音階の演奏を可能にしたもので
発明者 孫汲桂氏(1938~2004)の製作によるものです。

笙五種類の写真

日本の笙/中国の17簧円斗笙F調/21簧加鍵円斗笙E調/36簧活斗鍵打(加鍵方斗拡音)笙G調/36簧活斗鍵打(加鍵方斗拡音)笙C調



なぜ 三十六簧笙を使っているのでしょうか.....



まず第一に 機能的なことが理由です。

三十六簧活斗鍵打笙(三十六簧加鍵方斗拡音笙)は
  1. 和音が演奏できる(片手3本ずつ両手で6本の指で演奏しますので 同時に6つの音が出せます)
  2. 息継ぎ無しで演奏できる(息を吐いても吸っても音が出ます)
  3. 音域が広い(3オクターブでほぼヴァイオリンと同じ音域です)
  4. メロディーも演奏できる
  5. 抑揚が付け易い
  6. 演奏が非常に簡単
という様々な長所があります。

特に 息を吸っても吐いても演奏できる点が 丁度 弦楽器の上げ弓・下げ弓の動きに似ていて
ですので 息継ぎ無しに自然にメロディーが繋がっていくように演奏できることです。


第二に
人は何かに接した時に その人自身の持っている知識にその情報を当てはめようとします。
ですから ヴァイオリンの音を聞けば「あッ ヴァイオリンだ」
ピアノの音を聞けば「あッ ピアノだ」というように情報を受け止めがちです。
あるいは何かの曲を聴いた時も同じです。
「これはショパンのノクターンだ」 あるいは「~の演奏だ」というようにです。
ということは 何かの情報に触れた時に
実は本当に素直にはその情報に接していない その情報をそのままには受け入れていない とも言えます。
その点 三十六簧活斗鍵打笙の音はまだまだ未知ですので
音の響きを あるいは音楽そのものを
そのままに受け取ってもらい易いのではないか
ということです。



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