楽器の演奏法
3)方向性
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宇宙とは「意識体」であり 「エネルギー」であり ということは動いています。「動き」には「速度」と「方向」という二つの要素があります。「速度+方向=動き」ということです。
私たちは 何かを考えて 話したり行動したりしています。つまり 「意志」が「言葉」として発せられ「行動」として表れるのですが これらをまとめて「身口意」と言います。「身=身体の行動」「口=口から出る言葉」「意=思い」です。(なぜか順序が逆ですが・・・) これら「身口意」=思考と言動の全てが「動き」ですから「速度と方向」という要素があります。
ということは 「考える」のも「話す」のも「行動する」のも 全ては「速度」と「方向」とをコントロールしているということなのです。ですから 演奏も同じです。
演奏する楽曲の「速度+方向」と 身体の動きの「速度+方向」とが一体となるようにコントロールします。
@楽曲の「速度+方向」
ものごとの流れ すなわち時間の経過に乗った動きというのは基本的に「形」があります。ですから 音楽にも形式があります。その最も安定した形は「起承転結」です。「起承転結」とは「起(=物事を始める)⇒承(=それを発展させる)⇒転(=場面を変える/決断する)⇒結(=終結させる/完成させる)」という流れです。ほとんどの楽曲は基本的にはこの「起承転結」に則っています。
これが 多くのフレーズが8小節や16小節(=4の倍数)である理由です。そして 四拍子が最も安定して聞こえる理由です。あるいは ソナタ形式が「提示部/展開部/再現部/終結部」であるのも 四つの楽章で構成されているのも いずれもが「起承転結」だからです。(初期のソナタ形式では終結部はほとんどありませんでしたので 提示部を繰り返すことで「起承転結」の四部構成にしていました。)
例えば 一つのフレーズが
1234|1234|1234|1234|1234|1234|1234|1234|
1小節目|2小節目|3小節目|4小節目|5小節目|6小節目|7小節目|8小節目|
起―――――――― 承―――――――― 転―――――――― 結――――――――|
かもしれません。
あるいは
1234|1234|1234|1234|1234|1234|1234|1234|
1小節目|2小節目|3小節目|4小節目|5小節目|6小節目|7小節目|8小節目|
起――― 承――― 転――― 結―――|起――― 承――― 転――― 結―――|
かもしれません。
そして一つ目のフレーズが「起」となり 次のフレーズが「承」となって続いていきます。
更に その「起承転結」の一塊が 更に大きな「起承転結」の各部分となります。
起承転結|起承転結|起承転結|起承転結|起承転結|起承転結|起承転結|起承転結|
起―――|承―――|転―――|結―――|起―――|承―――|転―――|結―――|
起――――――――――――――――――|承――――――――――――――――――|
というように 入れ子構造になっています。
(私たち人間を含めて)全ての存在は 宇宙の中に存在しているのは 「創造行為」のためです。なぜならば 宇宙そのものが「創造」だからです。私たちは 自分の人生を自分で創造しています。(ほとんどの人は自覚していませんが。) 創造行為は基本的に「起承転結」の流れに則っています。「起承転結」とは「思いつく⇒その思い付きを発展させる⇒どう創るかを決断する⇒決めたことを実行する」という流れなのです。
起 |
何を創るか思いつく(「こういうものを創ろう!」) |
承 |
その思い付きを発展させる(「もっとこうしたほうが良いかな?」) |
転 |
どう創るかを決断する(「よし これで決定!」) |
結 |
決めたことを実行し(「いざ 創ろう!」)完成させる |
「起承転結」の「起」は 縦の動きです。物事の始まりとは「思いつき」で始まります。大抵の人は頭で思いつきます。その「思いつき」とは 縦のエネルギーの動きです。
次の「承」は 「起」で始まったものを発展させます。膨らませるということですが これは横への広がりです。ですから動きは横になります。
「転」は その字の通り「回転=捻れ」の動きです。
「結」は 前への動きです。なぜならば(起承転までは頭の中だけでも出来ることですが)実行するには身体の動きが必要で かつそれは 積極的な(=前向きな)姿勢だからです。
ですので 「起承転結」の動きは
起 |
縦 |
承 |
横 |
転 |
捻れ |
結 |
前 |
となります。
この 楽曲の各部分の方向性と 演奏する身体の方向性とを合致させれば 自然な演奏になるわけです。
A身体の動きの「速度+方向」
身体の姿勢というのは 結局はエネルギーの動きの「速度」と「方向」です。ですから 身体の姿勢によって 出す音のエネルギーの動き(速度+方向)が違ってきます。すなわち 音色/音質が違ってきます。
もっとも分かり易いのは 横の動きでしょう。試しに 身体の「右重心=右への傾き」と「左重心=左への傾き」で音を出して比べてみればすぐに分かります。体重を身体の右の方にかけて音を出すと「明るい音」になります。体重を左の方にかけて音を出すと「暗い音」になります。そうすると 「右重心」は「長調」に 「左重心」は「短調」に適していることが分かります。
身体を右に(=時計回りの方向に)捻って音を出すと 「充実した伸びのある音」になります。身体を左に捻って音を出すと「詰まった伸びの無い音」になります。
体の前の方に体重をかけて音を出すと「前向きな積極的な音」になります。体の後ろの方に体重をかけて音を出すと「弛緩した消極的な音」になります。
これらを「起承転結」のエネルギーの流れと結び付けます。つまり 楽曲の「起承転結」の流れに応じて 身体の姿勢を変えるということです。そうすれば 音楽の流れに合った自然な響きが出せるわけです。逆に これを無視すれば不自然な響きとなります。多くの演奏家が高度な技術を持っていながらも 必ずしも自然な演奏をできているわけではないというのは 実はこれが理由です。
楽曲の「起承転結」の流れに応じて 身体の姿勢を変えていくことで音楽としての自然な流れを響かせることが出来るわけですけれども しかし どのくらい重心を偏らせるとどういう音が出るのか どの方向にどのくらい捻るとどういう音が出るのか その度合いは様々ですから それを丁寧に探求していきます。
そうすると 楽曲を演奏する時に 意識せずとも自然に身体がそう動くようになります。意識は音と曲の流れに集注しているのですから 身体の動きは考えずとも自然に「そうあるべき姿勢」になっている必要があります。
身体の姿勢だけでは無く 身体の各部位(足/腕/手首/指)などの状態によっても音は違ってきます。それらについては「8)エネルギーとその流れ(上級用)」で説明します。
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