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芸術の様式

《幸也の世界へようこそ》《幸也の言葉》《公演でのお話から》 → 《芸術の様式》


(初めに楽器の説明をしていますが この文章ではそれは省略します)

この三十六簧活斗鍵打笙という楽器を使って
今お聴き頂いた様に 私は 自分の作った音楽を自分で演奏している訳ですが
多分私の音楽のスタイルは
《アール・ヌーボー》に近いものではないかと思います。
今から百年程前の 19世紀末から20世紀初めにかけて
ヨーロッパで起きた芸術様式ですが
その中心となったのが 私が住んでいるベルギーでした。
アール・ヌーボーは
無意識の世界 あるいは 「あの世」といわれる世界との関わりを基本としたものです。

ヨーロッパでは それ以前に
ロマネスク/ゴチック/ルネッサンス/バロック/ロココ/古典/
そして ロマン派/印象派/象徴派/キュービズム
といった様々な様式がありましたが
それらに共通していることは
それぞれの様式が単に他と違っているというだけではなく
なぜその様な表現方法をとるようになったのか その理由があることと
いずれの様式にしても
少数の芸術家によって始められたこと
そして その少数の芸術家たちは
「何を」「どう」表現したいという 強い意思を持っていて
それを表現したものが
(後に)「(時代)様式」として名が付けられたということではないかと思います。
それぞれの様式には
それを通して何をどう表現しているという特徴があるわけですが
(その違いが 様式の名の違いになっているわけですが)
それらは 決して多数の人々によって始められたわけではなくて
初めは 本当に少数の人によって始められたものです。
ある芸術家が 強い意思と信念とで こういうことを表現したい
こういう表現で沢山の人々に知らしめたい
という その思いの強さが それぞれの様式を始め
そしてそれぞれの様式の素晴らしさを決めているとも言えるかもしれません。

今 ここにいらっしゃる皆さんは
21世紀の初めにあたって
新しい価値観の 新しい芸術を創り出そうとしている方ばかりです。
つまり 新しい「21世紀の時代様式」を創り出そうとしている方々です。
その皆さんにこの場を借りて申し上げたいのは
私たちが今 この時代に 新しい価値観の芸術様式を創っていくにあたって
何よりも重要なのは
過去の様々な様式と同じように
今それに参加している私たちの
「何を」「どう」表現したい 「何を」「どう」世界の人々に伝えたい
という強く明確な意思ではないか  ということです。
私たちは
新しい様式で何を表現したいのでしょうか?
どういう価値観を提示したいのでしょうか?
それをどう表現し どう伝えていきたいのでしょうか?

これらをいかに明確にしているか
そして それを実現するいかに強い意思を持っているかが
私たちが本当に 素晴らしい今後を作っていく様式を
作り出せるかどうかに関わっているのではないかと思います。

ヨーロッパで暮らしていますと
あちらの芸術に触れて
様式の変遷や流れを捉えることが割りと容易です。
ですから それぞれの様式が何を表現しようとしたものなのかも
また理解しやすいのですが
日本に居ますと
いろいろな芸術に接する機会は 本当に多いと思いまが
しかし 日本では それらはばらばらのものとして見られていて
様式の変遷や流れを系統立てて捉えることは
なかなか難しいのではないかと思います。
そのために
それぞれの様式が何を表現しようとしたものなのかを理解することもまた
日本に居ると難しいのではないかと思います。

ですので
今の時代に 新しい芸術様式を確立しようとされている皆さんが
今後 ヨーロッパの過去の芸術に触れた時に
個々の芸術家の表現だけではなく
その「様式」が一体何を表現しようとして生まれたものなのか
どういう理念で生まれたものなのか
それをどう表現して人々に伝えようとしたものなのか を捉えることが
理念や目的や方法を明確にする一助となり その創作に役立つのではないかと思います。


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(この文章は 2008年11月3日に栃木県宇都宮市のネパール釈尊館で行われた公演での話を
文章化し加筆修正したものです)


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