楽器の演奏法
9)エネルギーとその流れ(上級用)
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演奏で何を表現するのか? それは最初に触れたように「音楽を奏でるため」であり 音楽を奏でるのは「祈り」の一形態です。祈りとは誰かに向けたもの つまり対象があります。けれども 究極の祈りとは その対象は限られた存在では無くて もっと普遍的なものになります。
私たちは肉体を持って生きていることによって「自分」と「他人」とを分けて捉えています。しかし「生命」そのものには自他の区別はありません。全ては「宇宙の中に存在している=宇宙の一部」なのです。ということは 本来の祈りとは 宇宙全体へ向けたものです。ですので 演奏をする時にも「宇宙」を 「宇宙全体」を意識することが重要です。
最初の項で説明した「基本の身体の状態」の状態で 静かにゆっくりと深呼吸をしながら「宇宙を呼吸する」ことを意識してみましょう。息=空気を吸う時に「宇宙(のエネルギー)」を吸っていることを意識しましょう。次に 胸の真中(=鳩尾)に意識を集中して そこのエネルギーがどんどん膨らんで宇宙大になることを 鳩尾が宇宙の中心であることを意識しましょう。
宇宙とは 全てがエネルギーです。音もまたエネルギーです。私たちが奏でる音楽とは 音というエネルギーを発散することです。音=宇宙なのです。
演奏をする時には 「楽器を演奏している」という意識になりがちです しかし本当は楽器を奏でるのでは無くて 宇宙を奏でるのです。「自分が楽器を演奏している」という意識では無く 「宇宙が(自分を通して)演奏している」意識になりましょう。宇宙そのものは楽器を演奏できませんですから「自分」の身体を使って演奏する そのために私たちは自らの身体を宇宙に貸すのです。
そしてこれが 身体の動きの基本が「脱力」+「落とす」である理由です。力が入っているということは 宇宙のエネルギーが身体の中に入ってくるのを邪魔してしまうのです。「素直では無い身体の状態」とも言えます。
〔意識を置く練習〕
そのために「意識を置く」ということを意識的に出来るようにします。「意識を置く」というのは どこか特定の場所に意識を置くことであり あるいは「意識の焦点を当てる」ということです。そうすると 意識の密度が高まります。(つまり「意識を置く」=「意識の焦点を当てる」=「意識の密度を高める」です。)
すでに述べてきたような 「胸の中心(鳩尾)」「丹田」「眉間(第三の目)の内側=松果体」など 身体の(チャクラと呼ばれている)エネルギーの節。
鍵盤に触れる/弦を押さえる/鍵を押さえる指(先)。弓を持つ右手の指や手首。マウスピースに当たる唇。これら 身体から楽器へと直接にエネルギーが注がれていく部位。
それらの部位それぞれに意識を置き 意識の焦点を当て 「その時の状態」「エネルギーの流れ方(速度と方向)」を観察し 「どうあるべきなのか」を想像します。
あるいは それらの部位に光の玉があるように想像します。
あるいは それらの部位に宇宙のエネルギーが注ぎ込まれていくように想像します。
あるいは それらの部位に「紫色の炎」が燃えている様子(というよりも 紫色の炎がその部位を包んでいる様子)を想像します。
〔意識を膨らませる練習〕
胸(鳩尾)に意識を集中します。目を閉じて胸をじっと見つめて焦点を当てる感じ。あるいはどういう状態(温かさ/堅さ/質感など)なのかしっかりと感じる。あるいは耳を傾ける。どういう匂いや味なのかを感じる。それが「意識を集中する」ということです。そして そこのエネルギーを感じます。やがて そこのエネルギーが段々と大きくなっていきます。ゆっくりと静かな深い呼吸をします。そして 胸のエネルギーと息とを合体させます。胸のエネルギーを息に乗せる感じ あるいは 息を胸のエネルギーに注ぎこむ感じです。そして 息とともに胸のエネルギーをどんどん膨らませます。宇宙そのものと一体になるまで膨らませます。
〔意識を繋げる練習〕
次には 上記三つのチャクラを同時に 繋がっているように意識します。それらと宇宙との繋がり (=宇宙と分かれているのでは無く 宇宙の一部であること)を意識します。
もう一つの練習は 身体のそれぞれの部位に意識したエネルギーを 音に注ぎ込みます。胸のエネルギーを膨らませて音に注ぎ込む。丹田のエネルギーを膨らませて音に注ぎ込む などなど。
そして最後に 身体の各部位も 音も 宇宙も 全てが一体であることを意識します。
これらを練習することによって 「楽曲と同調して動く」「(意識しなくても)自然と動く」ということが出来るようになります。
あるいは 楽曲のいつどこで意識をどこに置くのかを自由に変えられるようになります。チャクラについてはすでにいくらか触れましたが 調によってどのチャクラにエネルギーが主に集まるのかが違ってきます。最も分かりやすいのはト長調かヘ長調でしょう。ト長調では喉にエネルギーが集まります。ヘ長調では胸(=鳩尾)にエネルギーが集まります。ということは逆に演奏する時には ト長調では喉から ヘ長調では胸からエネルギーが出て音になるということを意識すると その調に合った自然な表現が出来るということになります。
イ長調 |
眉間(第三の目) |
第六チャクラ |
紺 |
ト長調 |
喉 |
第五チャクラ |
青 |
ヘ長調 |
胸(鳩尾) |
第四チャクラ |
緑 |
ホ長調 |
腹(臍よりも上) |
第三チャクラ |
黄 |
ニ長調 |
丹田 |
第二チャクラ |
赤 |
ハ長調 |
尾てい骨 |
第一チャクラ |
白 |
(第一チャクラの色は赤 第二チャクラの色は橙ですが ハ長調は白 ニ長調は赤です。ハ長調が基本調とされたのは白だからです。)
〔意識を置く場所〕
意識をいろいろな所に置いたり 流れを作る練習をしてきましたが 実際の演奏ではどこに置くのでしょうか?
昔 ユーディ・メニューインというヴァイオリニストがいました。神童として世界的に大変有名になった人です。しかし 大人になってから彼は悩みました。「子供の時のように弾けない」と。(これは彼だけでは無く 「神童も二十歳過ぎればただの人」という言い方があります。) それで彼はその原因を考えて考えて考えて・・・そしてヨガにその解決策を見出しました。(それが 彼の教教則本にヨガが取り入れられている理由です。) しかし 実はその「考える」ということが原因だったことに彼は気付かなかったのです。考えるということは 意識をそこに置いていますから 音楽には置いていません。子供の時は何も考えずに音楽に没頭できたのです。それが大人になると 余計なことを考えるようになったのです。
これが「演奏の時にどこに意識を置くか」の答えです。出している音です。楽曲全体としてどういう演奏をする ということはあらかじめ決めてあります。その中で「今出している音」はその時の音だけです。例えると 行き先を決めて歩き始めたらば 「その時に地面に触れている足」だけに意識を集中するということです。音楽は 楽器や音波という物質を使いながらも 非物質と繋がっています。非物質の世界では「時空間(=時間+空間)」は存在しません。ですから「今」しかありません。「今 出している音」に意識を集中するということは 身体の動きは自動的であるということです。つまり「こういう音を出そう」と意図した時には すでにその姿勢になっているところまで 身体の動きや姿勢を体得するということです。
〔方角〕
ここまで説明してきたように 演奏とは「宇宙のエネルギーの流れに乗る」ということです。そのためには 南に向くのが最も適しています。(これは 寝る時に北枕が最も良いのと同じ理由です。)
全てのエネルギーは基本的には 左から右に流れています。ですから「時間」というエネルギーも同様に 左から右へと流れています。(これが 時計が右回りである あるいは文章の横書きや楽譜を左から右へと書く理由です。) 地球の自転は西から東への回転です。そうすると時間的には 東が先 西が後です。南向きに立った場合には 左が東 右が西になります。そうすると 左からエネルギーが入ってきて右に出て行くことになります。これが「順」です。エネルギーの流れに乗っている状態です。
北を向くとこれが逆になります。しかし 寝た場合には逆です。仰向けで寝ると 左が東 右を西にするには 頭を北に向ける必要があります。(東も左も三音節で かつ母音は「イ+ア+イ」です。西も右も二音節で かつ母音は「イ+イ」です。これらのことからも 東と左 西と右の繋がりが分かるかと思います。)(左はエネルギーが入ってくる側 右は出て行く側というのが 多くの人が右利きである理由です。)(かつ それが弦楽器の弓を右手に持つ理由です。)
昔の人間は「絶対方位感」を持っていました。道具を使わずに東西南北の方角を認識できました。(今でもオセアニアの先住民族アボリジニは絶対方位感を持っています。) これが「宇宙のエネルギーの流れ」を感じ取っている状態です。それが出来ない場合には(=ほとんどの人は出来ないと思いますが)方位磁石などで確認しましょう。
〔音のエネルギーがある場所〕
先述したように 演奏とは「自分」がするものでは無く 宇宙に自分の身体を貸すことですが それは 身の周りにある音のエネルギーを感じ取って演奏するということでもあります。その音のエネルギーは身の周りに遍在しているのでしょうか? それとも どこか特定の場所にあるのでしょうか?
基本的には右上にあります。エネルギーの流れは左から右なのに どうして音のエネルギーは右側にあるのでしょうか?(逆を向いても右側にあります。) それは「左=過去」「右=未来」だからです。過去にあるものを音にするのでは無いのです。未来にあるものを音にするのです。
これは 「右=肯定」「左=否定」あるいは「右=実」「左=虚」ということと関係しています。(これがヨーロッパの言語で「右」と「正しい/正義」が同じ単語である理由です。) 演奏する時に「神様」や「天使」を感じる人もいるかもしれませんが それらも基本的には右上です。
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