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ベルギーの七大至宝

④ 「神の子羊」

ヒューベルトとヤン・ファン・アイク兄弟作/1432年/(ゲント/聖バーヴォ大聖堂)

《幸也の世界へようこそ》《幸也の書庫》《絵画を見る目・感じる心》《ベルギーの七大至宝》 → 《神の子羊》


《フランダース写実主義絵画の極致》

Het Lam God_open.jpg(229773 byte)

ゲントの聖バーヴォ大聖堂内に展示されている祭壇画で
通称「神の子羊」「ゲントの祭壇画」「神秘の子羊」などと呼ばれています。
1432年にヤン・ファン・アイクによって完成されたこの絵は
油絵の具が発明されたその初期にもかかわらず
西洋絵画史上最も完成度の高い作品とされています。

〔この作品についての詳しい解説は こちらをご覧下さい〕

【背景】
1)ゲント
フランダース伯爵領は ヨーロッパ内でも最も経済的にも文化的にも繁栄した土地ですが
その中でも14世紀に最も栄えたのがゲントです。
シュケルデSchelde川を使った交易と レイエLeie川流域で採れる麻によって その当時
アルプス以北のヨーロッパでパリに次いで人口の多い都市となっていました。
そのようなゲントの中でも 最も経済的に裕福であった一人が
この絵の注文主ヨース・ファイトJoos Vijdtでした。

2)油絵の具
1400年頃 トルネTournaiにおいて油絵の具が発明されました。
その発明は 絵画史上極めて画期的なことで それまでの絵とは全く違う
①克明な細かい描写 ②色鮮やかな描写 ③きれいなグラデーション 
④優れた耐久性 という特色を持っていました。
ですので フランダースの画家たちは油絵技術の開発に集注しました。
油絵の具によって 「本物そっくり」な表現が出来るようになったのです。
そして「本物以上に本物らしく」描くことを目指していきました。
そういう中で描かれたこの作品は 油絵の具が発明されて二三十年でありながら
その可能性を発揮しつくして 極めて完成度高く描かれたものであり
西洋絵画史上最も克明な 最も緻密な 最も色鮮やかな 最も真に迫る作品となっています。

【作者】
1420年に ヒューベルト・ファン・アイクHubert van Eyck(?~1426)が注文を受け
全体の構想を練り 制作を始めたと思われています。
しかし 製作途中の1426年に彼が亡くなったために
弟のヤンJan van Eyckが引き継いで1432年に完成させます。
兄ヒューベルトについてはほとんど何も分かっていません。
作品もこの一点しか知られていません。
マースアイクMaaseikの出身であろうこと。
その当時 最も優れた画家とされていたこと。
1426年9月18日に亡くなったこと。それらのみです。

弟ヤン(?~1436)は その作品が各地に残されています。
そして その極めて克明な描写から 「油彩の始祖」
とも言われるようになりましたが これは間違いです。
しかし 油彩の可能性を突き詰めて「油彩の極致」とも言える絵を描いたことは確かです。

【神の子羊】
三連祭壇画であるこの作品は 礼拝面(=開面)に14枚
閉じた面に10枚 計24の画面で構成されています。
礼拝面の上段は天上界 下段は地上界の様子
閉面下段には 寄進者夫妻と聖ヨハネ 上段には受胎告知
その上に旧約聖書の預言者たちが描かれています。

【様式】
全体の整った構図 その中の人物の的確な配置
無駄の無い 隙の無い きっちりとした描き方に ゴチック様式の特色が現れています。
また 全ての描かれているものが 距離に関係なく
「本物そっくり」の質感と色合いで克明に描き出されており
油絵の具の発明よって始まったフランダース写実主義絵画の極致と言える作品となっています。
しかし 一人ひとりの人物像は 生身の人間であるかのような生命観が表されています。
(そう見て取れるのは 兄ヒューベルトが描いたと思われる部分です。)

〔この作品についての詳しい解説は こちらをご覧下さい〕



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