コントラバスの演奏法
6)合奏
合奏の中でのコントラバスの役割は「支える」ということがほとんどです。 これは 言葉でもそれが表れています。 Bass ベースとは「低音」であると共に「基礎」「基本」を意味しています。
ということは 合奏の中でのコントラバスは 全体の基礎なのですから 全体を把握しておくべきです。 上の方でチャラチャラと旋律を奏でている楽器は 全体のことを把握せずにチャラチャラとしていても良いかもしれません。 しかし 基礎であるコントラバスはそうではありません。 くどいようですが コントラバスは他の弦楽器よりも表現の幅が狭く つまり表現力が劣っています。 だからこそ 表情豊かに演奏する必要があります。そのためには全体を把握しておくことが大事なのです。
〔発音のタイミング〕
コントラバスは弦が長いですので 発音に時間がかかります。 つまり 他の弦楽器と同時に弓を動かし始めても 発音するのが他の楽器よりも遅くなります。 これはオルガンのパイプの鳴り方も同様で パイプオルガンの演奏をホールで聴いてみればすぐに分かります。 両手同時に鍵盤を押さえても 低音は聞こえてくるのが遅くなります。コントラバスも同じです。
これを解決するにはどうしたら良いでしょうか?
先ずは「そういうものだ」として放置することです。 先のパイプオルガンの例のように「低音は高音よりも聞こえるのが遅い」という事実をそのままにするということです。
もう一つは「同時に聞こえるように 速めに弓を動かし始める」ということです。 ホールの中での全体の響きを聴きながらそのタイミングを調整します。
これと同様に 残響も低音の方が長くなります。 オーケストラ全体で「パンッ」と短く鳴らした時に 低音だけ残響が残ってしまいます。 これを避けるには(=避けたいのであれば) 高音よりも短く弾くということです。 そして 弦の余振動(=弓で弾き終えた後の弦の振動)を押さえて止めます。 (特に ピッツィカートでの余振動は「鳴りっぱなし」にされることが多いようですので きちんと「どういう響き」ということを意図しましょう。)
カラヤンはこう言っています。「多くの音楽家が 音の始まりは意識しているけれども 音の終わりを意識していない」と。 実際に 多くのコントラバス奏者が 音の終わりを意識していません。
〔全体を聴く〕
ということは コントラバスの場合 他の楽器以上に「ホールの中での全体の響きを聴く」ことが大事なのです。
演奏とは「どう弾くか」ではありません。「どう聴こえて欲しいのか」=「どう響かせるか」なのです。 「どう聴こえて欲しい」=「どう響かせたい」から「どう弾くか」だという順番をしっかりと認識しましょう。
コントラバスと重なっている楽器(チェロ/ファゴット/チューバ/ティンパニ など)はどう演奏しているのかにも気を配ります。
旋律線を弾く時には 他の楽器は同じ旋律をどう演奏しているかにも気を配ります。
そして 指揮者がいる合奏(=オーケストラなど)では 指揮者の意図を読み取ります。
そして それ以前に作曲者の意図を楽譜から読み取ります。
合奏の中ですることは多いのです。
合奏の時 楽譜は読みません。見るだけです。つまり 楽譜を読んで演奏するのでは無く 見て演奏します。 例えば今 あなたはこの文章を「読んで」います。「見て」いるだけではありません。その違いを認識して下さい。 しかし合奏の中では楽譜は読みません。見たら自動的に音を出します。
〔オーケストラの首席奏者〕
首席奏者は そのグループ全体の責任を負っています。 ということは「自分がどう演奏する」というだけではありません。 「自分たちコントラバスグループがどう演奏する」ということに責任を負っています。 ですから後ろの奏者それぞれがどう演奏しているのかをも把握します。
昔のベルリンフィルのコンサートマスターだったミシェル・シュヴァルベ教授は 「彼が演奏する時にはオーケストラ全体の響きが違った」と言われています。 実際にそうでした。 主席コントラバス奏者だったライナー・ツェッペリッツ教授が弾く時には グループ全体の響きが違いました。 (ドイツでは首席奏者は交代制ですので複数います。) 彼らは「背中で感化する」ことができたのです。 単に一番前で弾いているだけでは無いのです。 そういうのが本当の首席奏者としての器です。
【目次】
|
|
|
|
〔立奏と座奏〕 〔三点支持〕 |
|
|
|
〔ドイツ式とフランス式〕 〔ドイツ式弓の持ち方〕 〔コツ〕 〔練習〕 〔上下動の練習〕 〔左右動の練習〕 〔弓を弦に乗せる練習〕 〔腕の重みを乗せる練習〕 〔弓が弦に当たる位置〕 〔音の初め〕〔音の終わり〕 〔表情〕 |
|
|
〔弦の押さえ方〕 〔ポジションの移動〕 〔ヴィブラートのかけ方〕 |
|
|
|
|
〔独奏〕 |
|
|
|
〔合奏の基礎〕 〔発音のタイミング〕 〔全体を聴く〕 〔オーケストラの首席奏者〕 |